■プロフィール

トラトラ

Author:トラトラ
トラトラの日記です。
『のんびり獣道』というお話を掲載させて頂いております。
流す程度に読んでみて頂けると嬉しいです。

※注意事項です※
○コメントレスが非常に遅くなっております。 お急ぎの要件、レスが早く必要だという場合は、個別にレスが付けられる拍手コメントですとすぐにお返事が付けられますので、そちらのご利用をお願い致します。
○コメントにお話の予想やネタバレになりそうな内容を書き込まれる場合は、非公開でお願い致します。 ただ、拍手コメントは非公開にされますとレスが書けなくなりますのでご注意下さい。
○一つの記事に複数回コメントを書き込まれる場合は、三回までとさせて下さい。
◯楽しい場所にしたいですので、何かしら(アニメや漫画、社会情勢などなど)への批判やディスるといった内容、また自身の主義主張などのコメントへの記載はご遠慮下さい。
◯トラトラ屋創作物で、お話に出ていない設定を尋ねるのはご遠慮下さい。 二次創作等で必要という際には、御自身で自由にお考え頂いて構いませんですので。


以上、宜しくお願い致しますです~!!

■最新記事
■最新コメント
■最新トラックバック

■月別アーカイブ
■カテゴリ
■検索フォーム

■RSSリンクの表示
■リンク
■ブロとも申請フォーム
■QRコード

QRコード

ナギ編第二話「そのおとこのみちのり」ー中編
年内滑り込みセーフ!!!(笑)
ではでは、続き、どぞー!!


「…ひょっとして、ナギさんの本名ってアチラの、カタカナのお名前なんですか?」
「ん…?」

商店街で買った夕食の材料がたっぷり詰まったレジ袋を片手に、キバトラがふと尋ねてきた。

「いえ、もしそうなら、やっとナギさんが偽名を使っている理由がわかったと思いまして」

一体何を思いついたやらサッパリだが、ここは向こうに合わせるのが得策だろう。

「ほ、ほう…? 言ってみな?」
「ほら、探偵業って信用第一じゃないですか? こういう言い方は失礼になっちゃいますけど、やっぱり異国の方だとちょっと心配になりますよね? 文化の違いも言葉の違いもありますし、ちゃんと依頼内容が通じるかーとか日本では当たり前のようなプライベートな話も普通にバラしちゃわないかーとか。 その点ナギさんって外見からロシアの方だって判りにくいですし、和風の偽名を使っちゃえば日本人にしか思えないし、偽名ってなんかプロフェッショナルっぽいですしね~」

一気に話すと、どうだ!と言わんばかりにエッヘン顔である。
「…ほう、よく思いついたじゃねぇか?」
その内容にホッと一安心。 ある意味本心が口をついてでた。
やっぱりー!!と感嘆の声をあげると、キバトラは満面の笑顔を見せてくれた。

これは大きな進歩だ。
今までも自分の偽名に関しては、当然疑問を持っていただろう。 だがそれを質問してこなかったというのは、やはり最初に話した「殺し屋」というのが気になっていた、いや…それが真実だと知るのが怖かったからではないだろうか?
こうして質問してきたということは、彼が先程話した「探偵」というのを多かれ少なかれ信じてくれた証拠だ。 そしてそれに合わせた自分なりの考えが正しかったらしいことを知り、こんなにも喜んでくれている。

この「喜び」は、多分「安心」と同義のはずだ。

さて、とそこでナギは困った。

せっかく安心してくれたキバトラに、これからまた不安にさせるようなことをするつもりだったからだ。

それは家の所在の「秘匿」である。
部屋には呼ぶ。 それは以前から決めていたことだ。 だが、部屋の所在、自分が住んでいるマンションへの道程は知られたくなかった。
キバトラのことだ、家の場所を知ったら自分に内緒で遊びに来るかも知れない。 他の奴らに教えて、サプライズで押し寄せるかも知れない。 無論悪気がないのはわかるが、もしこの町の「外」にその情報が漏れてしまったら、何らかの危険が及ぶ可能性が高い。

自分に、ではなくキバトラに、だ。

星見町内ならオヤジ(源司)が監視しているから問題ない。 万が一部屋に何者かが襲撃にきても、俺の方はどうとでも対応できる自信がある。 だが、俺の所在という情報を持っているが故に、町の外でキバトラに危険が及んではどう仕様も無い。
その危険性だけは、絶対に排除しなければならない。
だから、目隠しでもして部屋に連れていくつもりだったのだ。

住宅街に入った所で足を止めると、ナギはニコニコ顔の店長、虎鉄に振り向く。
「あのな、キバトラ…」
「…やっぱり、おうちに行くのご迷惑なんじゃないですか…?」

突然の言葉に驚く。

「は、はぁ!? 何でだよ!?」
「先程から、何か躊躇われているみたいですし、歩くのゆっくりになってるから」
「そ、そんなんじゃねぇよ! ただ、そのな…」
「…?」

「その…探偵って言うのはよ…危険が及ぶことがあるもんなんだよ」
「はぁ…」

突然振られた話題がよくわからず、キバトラはキョトンとしている。
頭の中で文章を何度も咀嚼しながら、嘘が入らないよう、矛盾が無いよう、頭をフル回転させながら言葉を口にする。

「仕事の上で恨みを買ったりすることもあってよ、だからその…よ。 部屋には招待するぞ!? だがその道順とか、住所は出来るだけ秘密にしておきてぇんだよ…」
「あ! わかります!! 小説なんかでも探偵さんが犯人に狙われたり、危ない目に遭うことありますもん!」
「…だ、だろ!?」
「…あり? でもナギさんのうちって探偵事務所とかになってるんじゃないんですか? 依頼人さんとどうやって会ってるんです?」

うっ!!!!!

鋭いツッコミに頭がグルグルする!!!!!
だが、これはチャンスと思え!!! こいつの質問は「安心」の証拠なのだ!! こいつは不安に思ったり、知ってはいけないような空気を察するとそもそも質問なんかしねぇ!!
必死に考え、ここは正攻法で行くのがベストだと判断した。 ゲーム系は苦手だが、こういう時の勝負強さには自信があった。

「…実はな、個人でやってるんじゃねぇんだよ。 この国にはさ、俺みたいのが集まるでかい組織があってな、依頼はその組織が受ける。 で、その仕事に見合ったヤツのところに連絡が来て、俺らがその依頼内容を全うする訳だな。 で、結果を報告して報酬をもらう。 だから俺の部屋の所在は依頼主にはバレねぇわけだ。 だがどこで恨みを買っているかわからねぇからな、家の所在は秘密が原則だ。 偽名は俺が考えたわけじゃなく、その組織に付けられた。 理由はお前の察しのとおりで合ってると思うぜ?」

嘘はついてない。 無論騙していることには変りない。 欺瞞であることも分かっている。 ただ、それでも、
キバトラには、こいつには、ハッキリとした嘘はつきたくなかった。

「そ、そんな組織あるんですか!?」
「ま、まぁな。 この町じゃ知らねぇかもな。 オヤジが見てるから自警団も無ぇし、探偵なんてのも必要としてねぇだろ?」
「うーん、じゃあ愁哉君とか新郷知ってるかな…?」
(ギクッ!!)組織自体は都市伝説的な存在だぜ…? 茶道寺はそういうの興味ねぇんじゃねぇかなぁ…?」
「…そっか、俺も昔はここに住んでなかったけど、友達いなかったからそんな噂も聞くことなかったし、愁哉君も似たような環境だって言ってたっけ」
「だろ!?」
「新郷は…」
「あ! あいつにとっちゃ商売敵じゃねぇか…!! むしろあいつらには知られないようになってるんじゃねぇかな!?」

もう目眩がする!! 何をどう言っているのかわからなくなってきた!!!
ギブ寸前…!!! が、

「なるほどです!! じゃあ目を瞑ればいいですか?」

納得してくれたー!!!!! 見えないように密かにガッツポーズ!!!
しかし、よく考えると目を瞑って歩くというのは危険ではなかろうか? 転んで怪我でもしたら大変だ。
それは目隠しにしても同じ事だ。 少し考えると、良い事を思いついた!

「目は瞑らなくていい、ホレ、バンダナをもっと深く被るんだよ。 そうすりゃ周りは見えねぇが、隙間から足元は見えるだろ?」

なるほど!と目深にバンダナを被ると、ナギはすっとその手を握った。
「んじゃ、行くぜ」
そういうと、静かにその手を引いてくれた。

虎鉄はその手の温もりに、少し頬が紅潮するのを感じた。
バスの中では自分から握りにいったのに、何とも気恥ずかしさを感じる。
自分から手を握るのと相手から握られるのとは、どうも少し違うらしい。
とても、温かい。

ふと、周りからみると自分達がいい歳こいて手を繋いで歩くオッサンカップルに見えるのではないかと顔を真赤にした虎鉄だったが、その心配は杞憂であることを思い出した。

虎鉄のマンションや師範の道場がある住宅街は家族住まいがほとんどで、一軒家が多く立ち並ぶ。 その為向こうでは日中遊ぶ子供をよく見かけるが、大きな通りを一本挟んだこちらの住宅街は駅が近いこともあり、隣の標先中央のビジネス街に通う独り身のサラリーマンが多い。 建物も5,6階建てのアパートやマンションが多く、完全なベッドタウンとなっていた。 にろさんのマンションもこちらにあり、自分も大学時代はこちらにあるアパートから通学していた。
この為通勤時以外、特に日中の人通りは殆ど無く、結果この気恥ずかしい姿を誰にも見られずに済んだ。

どこかのマンションの前に到着すると、ナギさんの先導で階段を注意して上がる。
両開きのガラス戸を開けると、足元には自分の姿が映るほどのきれいな床が奥へと続く。 そのまま突き当たりにエレベーターがあるらしく、ポンと音がなると、静かに自動ドアが開いた。
「も、もう見てもいいですか?」
「駄目。 階数も内緒だ」

静かに上昇し再びポンと音がすると、手を引かれたままフロアに出る。
さらに歩みを進め、一つの、マットな黒い色調のドアの前で止まった。

「ちょっと待ってろ」
そういうと、ナギはズボンから鍵を取り出し、ドアに音もなく差し込む。 それを捻ると、ドアの中からガコン!!とでかい音が鳴り響く。
虎鉄が驚いたのは、ドアノブ側だけでなく、蝶番側からも同時に解錠の音がしたことだ。
一見意味がなさそうに思えるが、小説で一度読んだことがある。
鍵がかかったドアをショットガン(今の世の中にそんな物があるかどうかは知らないが)などで撃ち抜く場合、ドアノブ付近を撃つよりも蝶番を撃って破壊した方が容易くドアを開けられるそうだ。
つまりこのドアは、蝶番を壊しても開かない作りなわけだ…。 ナギさんが改造したのか、それともこれがこのマンションのデフォルトなのか、どちらにしても凄い警戒様である。

虎鉄を中に入れ、鍵を閉めてようやくバンダナを上げて良いお許しが出た。
視界を広げて最初に目についたのは、玄関に備え付けられた靴箱のデカさである。
高さは腰くらいまでだが、横にえらく長い。 さっさと部屋に入ってしまったナギに声をかける。

「ナギさーん。 靴箱見てもいいですかー?」
「…はぁー? 別に構わねぇけどよー」

一応のお許しを頂き、そっと引き戸を開けてみる。
想像通り、中にはズラリと高そうな革靴が並んでいた。 その端っこに、一昨年の夏祭で履いていたサンダルと、昨年のお化け屋敷で履いていたスニーカーが何とも場違いに置いてあり、何だか微笑んでしまう。

「おぉーい! さっさと上がって肉とか冷蔵庫に仕舞ってくれよー?」
「は、はーい!!」

焦って戸を閉めると、失礼しまーすと靴を脱ぐ。 既に揃えてあるナギの靴と、自分のうす汚れたスニーカーを見比べて軽く赤面しつつ、玄関突き当たりにあるおトイレへのドキドキを抑えながら室内に入る。

彼の住む部屋を目にしたとき、虎鉄は思わず言葉を失ってしまった。

綺麗で落ち着いた内装、たくさんの棚と、その中に並ぶ高そうな食器類。 革張りのソファーに大きなテーブル、その上には氷で冷やしたワインと、それを注ぐためのグラス。 そんな部屋を想像していた。
だが、目の前に広がるそれは、その想像とは真逆とも言っていい内装だった。
壁紙も何も貼られず、コンクリート打ちっぱなしの壁。
床はフローリングになっているが、絨毯などのアクセントは一切なし。
部屋全体の構造はまだわからないが、その大部分を占めているのではないかと思われる大きなリビングには、その体積に対して冷蔵庫、棚一つ、そして壁際に細長いデスクの3点しかなく、広いというよりもむしろ「がらんどう」という印象を受けた。 まるで引越ししたてのように寂しい部屋だった。

失礼しまーす、と小さくつぶやくと、キッチンの奥からジャバジャバと水の音が聞こえてきた。 どうやらシャワーを浴びているらしい。 こういう所は綺麗好きっぽいナギさんの印象とピッタリ一致するのだが、それだけに部屋の寂しさが一層際立つ。
言われたとおり食材を入れようと、レジ袋を黒い冷蔵庫の隣に下ろす。
あまり大きくない、胸くらいまでの大きさのものだ。 下の冷蔵室を開けて、虎鉄は再び言葉を無くした。
シャワーの音が止み、体を拭いてモゾモゾしているらしきナギに声を投げかける。

「…ナギさん…」
nagisto2-5.jpg
「…料理してないでしょ?」

冷蔵庫の中には、ミネラルウォーターが3本入っているのみであった!!
当初は外食派ではないかと思っていたナギさん!! 部屋で美味しいものでも~なんて言うからてっきり自炊派と考え直した矢先がこれだよ!!!
服を着替えたのか、奥から出てくるナギに視線を投げかける。

「…まぁ、ある程度の収入ができちまうと外食メインになっちまうけどよ、こっちに来る前はちゃんと自炊して…」
nagisto2-6.jpg
「…ん?」
nagisto2-7.jpg
「どした?」

お風呂上がりナギさん!!!

あれ…? お風呂上がりのナギさんって初めてじゃないよな…?
前にうちでお風呂に一緒に入ったときに見てなかったか? な、何でこんなにドキドキするんだろ…!?
そう妙に焦る虎鉄だったが、なんとなくわかった気がした。

「そっか、ナギさんのそういうラフな格好って珍しいんだ」
「は? そうかー? お化け屋敷でスウェット着ただろ?」
「あ、あの時はそんな余裕なかったですし…!!」
「そっかー。 そうだよなー。 お前、アホみたいにビビってたもんなー」

ニヤニヤ顔のナギに、虎鉄は顔を真赤にしつつ冷蔵庫に物を詰めまくる。
「そ、それはもういいじゃないですか! そ、それより…えーと…」

話題を変えようと必死のこてっち(笑)

「そうだ! 今『こっちに来る前』って言いませんでした!? 星見町の前ってどこに住んでたんですか?」
「星見町の前?」

何とか話題の方向転換に成功したようだ!! ナギのニヤニヤ顔は少し考えるような顔に変わっていた。
「…小樽だな」
「小樽!!? 小樽って北海道の小樽ですか!!!?」

全く予想外の答えが帰ってきた!!!
「あぁ。 その小樽だな」
「港町ですよね!!? 海の匂いとかきつくないですか!!!?」

キバトラの驚きように一瞬驚いたナギだったが、なるほど合点がいった。
自分達は「獣寄り」だから、その辺りで驚いたのかな。

「小樽っつっても山の方にだってあるんだぜ? まぁ山は山で匂いがキツイが、交通が不便な分家賃が安くてな」
「へ~! あ、でも向こうって雪とか凄くなかったです?」
「ハハ。 朝起きたら積もった雪でドアが開かなかったりしたんだぜ?」
「マジで!!!? 北海道ハンパねー!!! あちらにはどのくらい住んでたんですか!? 次が星見町…!?」
「何だよ、今日は質問多いじゃねぇか?」

それはこいつの安心の証だ。 嬉しくなってそう言ったが、逆にキバトラは顔を真赤にして俯いた。 失礼に思われたと勘違いしたんだろう。
「ハハハ! 何落ち込んでんだよ! 構わねーって! お、ちょっと待ってな」
耳がピコン!と立つと、台所へと入っていく。
戻ってくると、顎で部屋の奥のデスクを差した。 向こうに座れという意味らしい。
備えつけのキャスター付きの椅子にチョコンと座ると、目の前のデスクに円筒状のマグカップを置いてくれた。
仄かな香ばしい香りが鼻をくすぐる。 ナギさんがコーヒーを淹れてくれたのだ。
「ありがとうございます…」
そう言いながら、マグカップを両手で持つと、その温もりが伝わってくる。
鼻に近付けて改めて香りを吸い込むと、香ばしくも深い匂いが広がっていく。 
ブラックコーヒーは飲めない虎鉄だが、この匂いは大好きだ。

ナギも自分用に淹れたコーヒーを口にしている。 その手にしたコーヒーカップを見て、虎鉄は意表を突かれた。
「ナギさんそれ…使ってくれてたんですか?」
それは、昨年の誕生日に虎鉄がナギにプレゼントした、似顔絵入りの手作りコーヒーカップであった。

「あぁ、普段は棚に仕舞ってあるが、コーヒー飲むときは結構使うぞ?」

そうなんだ…そう小さく呟きながら、虎鉄は嬉しくて堪らなかった。
差し上げてはみたものの、普段ダンディな印象が強かったナギさんにはやはり不釣合だし、使われてはいないだろうと思っていた。
虎鉄のズボンのポケットには、今も同じ日にナギからもらった懐中時計が入っている。 互いにプレゼントを今もこうして使っていることが、何より嬉しかった。

「あの、お砂糖もらえますか?」
「ねぇよ」

ニコニコ笑顔になって出た問い掛けに、何やら予想もつかない返事が返って来た気がした。 いや、空耳かな。 もしくはなにか向こうが聞き間違えたかな。

「コーヒーに入れるお砂糖を…」
「ねぇよ」

同じ答え返って来た!!!!!

「え!? 無い!!? お砂糖が!!!?」
「ねぇな。」
「調味料ですよ!? 『さしすせそ』の『さ』ですよ!!!?」
「俺、料理してるか?」

してなかった!! 外食派になってたー!!!

「じゃ、じゃあせめてミルクか何か…」
「冷蔵庫の中にあったか?」

無かったー!!! 水しか無かったー!!!!

「つうかまずは普通に飲めよ。 せっかくお前用に分量変えてやってんだから」
「え? 分量? もしかしてこれって豆から?」
「そうだよ。 今回はかなり美味くいったと思うぜ?」

そう言うと、再びコーヒーを口にする。
味わい深そうに口から喉に流し込むと、自画自賛が如く「うん」と小さく呟く。
光を反射して輝く琥珀色の液体に目をやり、そのままそっと口に含んでみる。

僅かな沈黙。 そして静かに、驚きと共に見開かれる瞳。

「どうだ…美味いか?」

「苦ーい」

ハァと大きく溜息をつくと、ナギはズボンのポケットから何か細長いものを取り出すと、虎鉄に手渡した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あるんじゃないですか、スティックシュガー!!!?」
「お前用に買っておいたんだよ」
「さ、最初から出してくれればいいのにー!!!」
「初めっから出したらお前、せっかく俺が淹れたコーヒー味わいもせずにガバガバ入れただろうが」
「(うっ!!!)ま、まぁそうですけど…」

確かに豆から淹れてくれたナギにはちょっとショックな光景だろう。 もらった砂糖を入れようか迷っていた虎鉄に、ナギは食器棚から小さなスプーンを取ってきてくれた。
OKのサインと受け取ると、もらったスティックシュガーを全て入れると、グルグルとかき混ぜて口に含む。
「は~、美味しい~!! ナギさんコーヒー上手ですね~」
「さ、3本全部入れやがった…。 それで上手も何もねぇだろうが…」

虎鉄がボリボリと頭を掻くと、二人揃って笑った。

「そうだそうだ!」
「なんです?」
「さっきお前、俺の事聞きたがってたじゃねぇか? ちょうどいいもん書いてっから、ちょっと見てみるか?」
「え!? 何ですか!?」

ナギが指さしたのは、デスクの上のノートパソコンである。
いや、ノートパソコンかと思ったが、それは昔懐かしいワープロであった。
小説の中では、探偵は事件の顛末をタイプライターで打ったりしているが、現代の探偵はワープロなんだろうか?と興味深げに覗き込む。
椅子に座ったままの虎鉄の横に肩を寄せて中腰で立つと、ナギは開いたワープロから保存文書を一つ呼び出す。
「今よ、何ていうか、自叙伝? 俺の生き様みてぇなもん書いてんだよ」
nagisto2-8.jpg
「へ~!!」

読み込まれた文章に期待の眼差しが注がれる。 人がプライベートで書いた文章というものを読むのは初めてだ。 
本好きの虎鉄の胸が高鳴る。

『ー男の生き様』

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
視線を下にずらす。


『ー男の生き様

今日も一日が始まりを告げる。 朝、男は行きつけの洒落たオープンカフェで一杯のモーニングコーヒーを飲む。 そのモーニングコーヒーの何とも言えない美味さに、男の脳は目を覚ましていく。 一日の始まりだ。』

nagisto2-9.jpg
「おぉおい!!!? 何閉じてんだよ!!!!? まだ殆ど読んでねぇだろ!!!!!」

「…ナギさん…」
nagisto2-10.jpg
「格好つけすぎ」

「格好つけすぎ!!!!?」

「何て言いますか、ナギさんって格好つけないでいると格好いいのに、格好つけると格好悪いですよね」

「どういう意味それ!!!?」

「例えばですね…」
一度閉じたワープロを再び開く。 そして、見ているこっちが恥ずかしくなるその文章を指さす。

「まずここ。 自分を『男』って表現している辺りが恥ずかしいです」
「恥ずかしいってお前!!!? 男じゃねぇかよ!!!」
「いや、男ですよ? ご立派すぎるくらいの男性ですけど(ポッ)、これだとやっぱりクサイ感じなんですよ。 せめて「その」とか付けるといいんじゃないかと」
「クサイってお前…クサイってお前…」
「あとですね、この辺の文章、めちゃめちゃ単語被ってます。」
「…は? 何がだよ」
「『朝』と『モーニングコーヒー』被ってるじゃないですか? あと一日の始まりも二回出てきてますし」
「は、はぁ? 何が被ってんだよ?」
「え…と、例えば最初の文章はもっと短く纏められるんですよ。 そうですね、『その男の一日は、行きつけのオープンカフェで口にする一杯のモーニングコーヒーから始まる。 その芳醇かつ濃厚な深みのある香りと味わいに、その男の脳は次第に覚醒してゆく』…とか?」

「………キバトラ…」
「は…はい…?」
「お前凄ぇじゃねぇか!!!? 何!? お前、小説でも書いてんのかよ!!!?」

いきなりヘッドロックをかましながら、こめかみをグリグリしてくる!
「ちょ!! い、いや、文章って結構パターンですから!! 本とか読んでたらこれくらいは思いつきますよ…!!!」
「いやいや! 大したもんだって!! 俺も本は読むが、そんなスラスラ出てこねぇぞ?」

ナギがクイッと顎で差したのは、冷蔵庫の隣の食器棚である。 よく見ると、下の棚には本が仕舞われていた。 タイトルが小さく見えるが、心理学や行動学の専門書のようである。 これまた意外…。 だが、探偵ならこういう書籍を読むのも頷ける。 何だかホッとする。

「ああいう本じゃなくって、小説とかですね。 独特の言い回しなんかはパターンで覚えちゃえばいくらでも使えますから」

へ~、と心底感心している。 恥ずかしくなってきた虎鉄は、話題を進めようとさらに文章を読み進めた。

「…ところでナギさん…」
「ん?」
「お仕事のことは書かれないんですか?」
「…あぁ。 仕事の内容は、いわゆる企業秘密だからな。 こういう所には書けねぇよ」
「…じゃあ完全にこれって普段のナギさんの格好良さげ生活日記じゃないですか」
「違うのか?」
「えーと…『自叙伝』ですよね…? それならもっと今までの、『みちのり』みたいのを書いた方が良いんじゃないですか? 小樽で生まれたんですか? その辺から…」
「…お前って意外と人の話聞いてねぇよな?」
「は?」
「ばあさん、ロシア語覚えられなかったっつたろ」
「えぇ。 …え?」
「お前なぁ、ハーフの母親と、さらにロシア人の父親が偶然日本で出会ったとでも思ったのか?」

「ロシアで生まれたんですか!!!?」

「普通はそう思うだろ!?」
「いや、なんか全然イメージなくって…。 じゃあ途中で小樽に引っ越し…あ! だから小樽なんですか!?」
「そうだよ。 船が着いたのが小樽だから、そのままあそこに住み着いたんだよ」
「…じゃあご家族は小樽? あ、それともロシアに残ってらっしゃるとか?」
「全員死んでる」

「……え…?」
「俺の両親は生まれたばかりの俺をばあさんに預けて行方をくらませた数週間後に死体で見つかった。 爺さんは獣人が大嫌いで結婚には最後まで反対してたそうだが、娘はやっぱり可愛かったらしくてな、後追い自殺したらしい」

「…あ、あの…ごめんなさい…」
再びしょぼくれてしまった虎鉄に、ナギは笑いかける。
「訊かれて嫌なら答えてねぇよ。 お前も答えたくねぇことは答えねぇだろ?」
「そうですけど…」

「俺はさ、嬉しいんだよ。 お前がそうやって、普通に俺の過去を訊いてくれたことがさ」
「…ナギさん…」
「本当はさ、ずっと気にしてたろう? 俺の左目も、肩と胸の傷もよ」

ナギは、服の上から肩と胸をさする。
「…まぁ、話せねぇことは色々あるんだけどよ、それでも自叙伝書くって言うならどの辺は書いた方がいいとか、お前のアドバイスも聞けそうだしな」
「そんな…自分なんかお役に立てるか…。 あれ、でもそういえばそもそも、どうして自叙伝書こうと思ったんですか?」

「…そうだな、俺がそこにいた証っつうのかな、そういうのを誰かが見てくれてもいいんじゃねぇかなーとか思ってさ」

「…そんな寂しいこと、言わないでくださいよ」
「は? 何がだよ?」
「だって、ナギさん何処かに行っちゃうみたいな言い方するから…」
「はは、そういう意味じゃねぇよ。 ただ、俺っつう『歴史』を風化させたくないっつうの?」
「またそんな格好付けて。 ナギさんへの一番のアドバイスは、素直に思ったまま感じたままをそのまま書くっていうことですよ」

苦笑いの虎鉄に、難しいなーと同じく苦笑いしながら小さく言うと、ナギは再びコーヒーを口に含む。


覚悟は決まった。


「そんじゃ、聞いてくれるか、キバトラ? お前の言い方を借りるなら、『その男のみちのり』ってやつをよ」

虎鉄もコーヒーを少し口に含むと、カップをデスクに置き、ナギを真っ直ぐに見る。 そして小さく頷いた。
ナギもカップを置くと、デスクの端に腰掛ける。

「俺は、貧しい街で生まれた」

遠くを見るような瞳で、ナギは静かに語り始めた


「そこには、大きな街が二つあった。 川を挟んで二つ、豊かな街と貧しい街だ。 二つはでかい跳ね橋で繋がっていたが、そこを渡るヤツは誰もいなかった。 豊かな奴らは貧しい街を汚いものを見るような目でしか見ねぇし、貧しい街の奴らは豊かな暮らしを見てしまったら、今の生活に耐えられなくなるからだ。
俺は、その『貧しい街』で生まれた。
そこの街の奴らの暮らしは、今の俺達からみると信じられないような暮らしだった。 そこの奴らはどんなに働いても働いた分に見合う金が得られず、いつだって腹をすかしていた。 豊かな街にとっての『安価な労働力』ってやつだったんだな。

じいさんが死に、じいさんに頼りっきりだったばあさんは俺や自分の食い物の買い物以外、まるっきり外に出れねぇ。 言葉が話せねぇからどうしようもない。
じいさんの蓄えはあったものの、俺らには『先』が無かった。
ガキの俺には働き口が無い。 あったとしてもろくな収入は見込めない。

俺は、より容易く、より確実に腹を満たせる道を選んだ。
俺は、「奪う道」を選んだ。

そうだな、ある時ふと見かけたんだよ。 いつもブラブラして働かない男が何故餓死しないのか、その理由を。
そいつは、必死に働いて僅かばかしの金を手に入れた男を襲い、暴力で金をぶんどったのさ」

虎鉄は、何も言わずに黙って聞いている。
少しだけ考えたが、ナギは素直に話すことにした。

「俺は、そいつを襲った。 俺には理解できなかったんだ、何故あんなのろいパンチを喰らうのか。 案の定、ヤツは俺に指一本触れることも出来ず、膝と肩をすべて壊され、地面で呻いていた。
ヤツの懐からは、今奪ったのとは別の金が他にも入っていた。 先に金を奪われて倒れていた男を俺は見た。 そして、ガキの俺は学習した。

奪うなら、働いて金を手に入れたヤツよりも、そいつらから金を奪っている奴らからの方が効率がいい、ってな」

「それは…」
「義賊なんかじゃねぇぞ。 そんな高尚な意思なんか持ち合わせちゃいない。 ただ、少ない回数でより効率よく金を稼げる手段を見つけただけの、残虐な意思だ。 だが、それを義賊と勘違いした奴らが多かった。 今にして思えばそうだったんだろうな、って話だがな。 俺は金を奪われた労働者に金を返すようなことはしなかった。 だが、奴らにしてみれば、それは『正統報酬』だったんだろう。 なにせそういったゴロツキ共に目をつけられれば、死なない程度の頻度だろうが、何度も何度も金を奪われるわけだからな。 弱肉強食、力ない奴らはそれに従うしか無かったんだが、奴らから金を奪う奴らよりも上の怪物が出てきたわけだ。 一時の金くらい渡すわな。

その街では、『獣寄り』は恐らく俺一人だった。

俺の下(もと)には次々と略奪者の情報が集められ、食うに困らなくなった。
そんなある日、俺は『向こう』に興味を持った」

「豊かな街…ですか?」
虎鉄の言葉に、自嘲気味に笑みを漏らす。
「そうだ。 向こうにはどんな生活があるのか。 今、自分は金に困らず、食うに困らぬ生活をしている。 自分の生活と大して違わないだろうと思ったのさ。 ガキの浅知恵だな。
橋を渡り、それを目にして、俺は愕然とした。

埃一つ無い街並み。
ビジネス街に赴く、パリっとしたスーツに身を包んだ男達。
綺羅びやかな宝石に着飾った女達。

オープンカフェで新聞を広げ、優雅にコーヒーを飲む、サラリーマンの朝。

俺は街に戻った。
いや、逃げ帰った、が正解かな。 まるで違う世界に目眩がした。 生まれた場所ひとつで、こんなにも違うのかと人生を呪った。 そして、

その生活に憧れた。

ある時、こっちで言やぁ高校生位の時分か? 俺は一つの話を受けた。 自分達の賃金が低いのは、豊かな街に住むとある男への上納金が多すぎるからだ、だから何とかしてくれ、ってな。
少しは成長したと錯覚していた俺は、再び豊かな街を訪れた。
だが、致命的だったのは、俺がロシア語をヒアリングはそこそこ出来るが片言しか喋れないこと、そして、文字の読み書きが出来なかったことだ。 住所が分かっても、そこに辿り着けなかったのさ。
道がわからず、うろちょろしていた俺は『そいつ』にとってはイレギュラーだったんだろうな。 細い路地裏で、前を少し離れて歩いていた男の頭がいきなり血を吹いた」

虎鉄は目を見開き、両耳を少し伏せていた。
その姿を寂しそうに見ながらも、ナギは続けた。

「俺の中の獣は、お前にもそういう感覚があるだろうが、危険信号を発してた。 五感全てが跳ね上がり、自分めがけて飛んできた弾丸を、俺は視認した。 そして既(すんで)の所でかわし、自分を狙った男をビルの屋上に見つけた。 そいつに逃げる時間など無かった。 わかるだろ? ブチギレた俺らから逃げられるヤツなんていねぇ。 命の危険を感じた俺は、そいつを再起不能にした」

ーそれが、俺にとっての最初の「殺し」だ。
懐に忍ばせていた大型ナイフで、拳銃を構えたそいつの腕ごと切り飛ばし、悲鳴をあげるための空気の通り道を切り裂いた。
あの日、俺は自分が「ケダモノ」である事を知った。

そして俺は、拳銃と  スナイパーライフルを手に入れた

「俺はその件をきっかけに、豊かな街に仕事の場を移した。 外見は豊かでも、その下には貧しい街と同じものが流れていることを知ったからな。 やり方は前と同じだ、依頼を受け、全うする。 唯一違ったのは、それまでとは桁違いになった報酬だ。 だが、それでも俺はやっぱりガキだった」

「……」
キバトラは無言だ。 当然だろう、この話の行き着く先を、こいつは目の前にしているのだから。

「その報酬ですら、街の奴らからすれば安価だったんだ。 それが『奴ら』の怒りを買った。 
その街には、『マフィア』がいたんだ。 
安い金で自分たちの仕事を奪った若造、奴らは『狩り場』を荒らされたのさ。 
二十歳になった時、俺は依頼の最中で後頭部を殴られ、気が付くと真っ暗な部屋にいた。
自分にだけ明かりが照らされていて、周りが何も見えねぇ。 椅子に座らされ、後ろ手をロープで縛られている。 足が自由なのが不思議だった。 普通なら両足とも椅子の脚に縛り付けそうなものだが、なめられていたのかもな。 そんなチャンスがあるのに、現に俺は動けなかった」

ナギが静かに眉間に人差し指を付ける。

「ここに銃口が突き付けられていたからな。
生まれて初めて、俺は恐怖した。 震えが気付かれないよう必死だった。
その銃口は、ゆっくり喉、心臓、肺へと動かされていく。 遊ばれてるのが分かりつつ、それでも銃口が肺を通り過ぎたとき、重要器官から離れたことにホッとした。 が、次の瞬間、左肩を撃ち抜かれた。 俺は、仕事の為の『利き腕』を潰された」

目を瞑り、耳を思いっきり伏せて震える虎鉄。 怯えながら、例の修学旅行の時のナギを思い出す。
そういえば幸志朗さんを殴ってた手、左だった…

「拳銃をホルスターに仕舞うと、今度は大きなナイフを取り出した。 それはかつて、俺が護身用に持っていたヤツだ」

俺を狙った殺し屋の息の根を止めた、あのナイフだ。

「ヤツはそれを俺の左胸にあてがい、力を込めてゆっくりと斜めに引いた。 続けざまの激痛に、俺は泣き叫んだっけなぁ。 そうしてこいつが付けられた」

再び肩と、そして左胸を押さえる。

「こいつはな、ヤツラにとって意味のあるマークなんだよ。 使い物にならねぇ、『廃棄物』って意味らしい。 利き腕を潰された俺につけられた烙印だな」

「…どい…」
キバトラが小さく何かを呟いたようだが、よく聞こえなかった。

「そしてナイフは俺の顔面に向けられた。 どうしようもない、どうにもならない状況で、俺はたった一つの『賭け』に出た。 
手段はある。 足が縛られていないのが利用出来る。 だが必要なのは、目の前の男の『隙』だ。 その空間に他のヤツの気配はしない、目の前の男を何とかすれば逃げられると踏んだ。 だが、隙がない。 下手に動けばブスリで終わりだ。 だから俺は賭けに出た。

そいつが持ってるナイフに、思いっきり顔面を突っ込んだ」

虎鉄が小さな悲鳴を漏らす。

「…そ、その目って…」
「あぁ、思った以上に深く刺さっちまってな、利き目もパァだ。 だが、ヤツはハッキリと動揺した。 自分が刺そうとしていたのとは違うタイミングで刺さってしまう、その考えてなかった状況に一瞬の隙が出来た。 その一瞬で俺は思いっきりヤツの脛を蹴り上げ、体勢を崩した瞬間にヤツの急所を自分も後ろに倒れる瞬間を見計らって思いっきり蹴った! 野郎、オカマになったかもな! で、ロープを力任せに引きちぎって、腕はズタズタになったが何とか解けてな、転がっていたナイフを拾ったらヤロウの姿は消えていた。
俺は、耳と、鼻と、勘を頼りに必死に走り、そこをどうにか抜けだした。
振り返る余裕も度胸もなく、俺は人生で二度目の敗走となったわけだな。

で、家に帰ったらばあさんが殺されてた。
これがヤツラのやり方なんだろう。 俺は全てを失って、その夜、怪我を包帯でぐるぐる巻きにして、残された僅かな金を持って跳ね橋にやってきた。
でかい船が通り、橋が真ん中から左右にこう分かれる時によ、そこから飛び降りて密航したわけだ。
右向きならイギリス行き、左向きなら日本行き、俺がそこに着いた時にやってきたのは左向きだった。 俺には好都合だったからな、そのまま函館にやって来たって訳だ。 それからはまたゴミみてぇな生活だったがまぁ何とかやって…お、おい!」

気が付くと、キバトラは目から涙をボロボロとこぼしていた。
「ば、バカ! お前が泣くことじゃねぇだろう!?」

出来るだけ暗くならないように話したつもりだったが、やはり堪(こた)えてしまったか…?
今の利き手で大粒涙を拭ってやる。
「…いつら…」
「ん?」
「そいつら…」
nagisto2-11.jpg
「…許せね痛ったい!!!!!

「な、何するんですか!!?」
いきなりのデコピンに抗議の声を挙げる虎鉄の頬に、ナギはそっと手をやった。

nagisto2-12.jpg
「お前はそんな目」
nagisto2-13.jpg
「するんじゃねぇ」

ナギの言葉が、虎鉄を現実へと引き戻す。
また自分が少し切れ気味になっていたことに気付き、最近は以前より切れやすくなってきていることに反省する。
視線をそらして恥ずかしそうにボリボリと頭を掻くキバトラに、ナギは少し安心する。

どうしてこいつはこうも、人の為に傷ついたり、泣いたり、怒ったり出来るんだろうな…
まぁ、こういう所を含めて、俺はこいつが


ーこいつが…?

あれ? 今俺、何て言おうとしたんだ…?
俺は

俺は…こいつのことが…

nagisto2-14.jpg

キバトラのことが…?


つづく


はい、という訳で、こんなに長いのに「中編」!!! もう本当にどうにかしてー!!!って感じかもですが、まだ続くんです(茶道寺編で他のキャラは短いとか言ったような…)
今回はナギさんの過去話っていうことで、前半の街紹介とかは削ろうかとも思ったのですが、商業誌ならいざしらず個人でやってる文章ですから、設定紹介もかねて削りませんでした。
漫画やアニメなら、間違いなくいきなり部屋に到着してるね!

という訳で、次回に続くのです~!
クリスマスの分のレス、すみませんです!! 順次書いていきますのでー!!
さて、年末年始は…どうしようかしら…

のんけも | 13:48:05 | Trackback(0) | Comments(27)
次のページ

FC2Ad