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トラトラ

Author:トラトラ
トラトラの日記です。
『のんびり獣道』というお話を掲載させて頂いております。
流す程度に読んでみて頂けると嬉しいです。

※注意事項です※
○コメントレスが非常に遅くなっております。 お急ぎの要件、レスが早く必要だという場合は、個別にレスが付けられる拍手コメントですとすぐにお返事が付けられますので、そちらのご利用をお願い致します。
○コメントにお話の予想やネタバレになりそうな内容を書き込まれる場合は、非公開でお願い致します。 ただ、拍手コメントは非公開にされますとレスが書けなくなりますのでご注意下さい。
○一つの記事に複数回コメントを書き込まれる場合は、三回までとさせて下さい。
◯楽しい場所にしたいですので、何かしら(アニメや漫画、社会情勢などなど)への批判やディスるといった内容、また自身の主義主張などのコメントへの記載はご遠慮下さい。
◯トラトラ屋創作物で、お話に出ていない設定を尋ねるのはご遠慮下さい。 二次創作等で必要という際には、御自身で自由にお考え頂いて構いませんですので。


以上、宜しくお願い致しますです~!!

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源司編第二話ー始
とその前に、ちょびっとだけ追記で告知させてくださいねw
デジケットで「ヴァナスピラ絵ろ日記」販売開始いたしました! 宜しければダウンロード頂けると嬉しいです~。
デジケット・ヴァナスピラ絵ろ日記
デジケットマージン分で高くなってしまって申し訳ありませんです…。

ではでは、本編どぞー!!!



二人並んで夕飯の食器を洗っていると、入口の鳥居が反応した。
二人は大慌てで玄関に向かい、その人物を出迎える。

「おかえり、兄ちゃん!!!」

gensto2-1.jpg
「…あぁ、ただいま…波威流、弩来波」
二人がドン引きしてしまうほど、久方ぶりに見た兄はくたびれきっていた。


「…兄ちゃん、大丈夫…? すぐにお布団敷こうか?」
恐る恐る訊く波威流に、兄は少し困ったような笑顔を見せた。
「いや、すまないが温泉入らせてもらっていいかな…?」
「あ! う、うん、お客さんいないし、ゆっくり入れるよ!」

兄は少しふらつきながら、それでもありがとうと二人に微笑みかけた。

そう、少し考えればわかることである。
ただ休みたければ兄の自宅に直帰すれば良い。 わざわざこちらに足を運んだ理由といったら、温泉以外にないだろう。
ヨタヨタと廊下を奥へと歩いて行くその後姿を見ながら、二人は自分達が最愛の兄の今の姿に随分と動揺してしまっていたことに気が付く。

「そうだ…」
ふと立ち止まると、兄はくるりとこちらを振り返る。
「すまなかったね…波威流と弩来波、それに虎鉄さんとで企画した温泉一泊、断ってしまって」
「あ、いいよいいよ!」
「神関係の仕事じゃしょうがないじゃん!」
二人揃って、大慌てで頭と両手をブンブンと振った。

そう、兄がここまで疲弊してしまった原因は、温泉宿泊を企画した3月初旬から今日3月13日まで続いた、その「神関係の仕事」にあった。

「神システムの更新(アップデート)」。
現在、この世界を成り立たせているあらゆる法則、ならびに神々が使用する力の全てを制御している「神システム」は、種族大戦終結時に開発されたものであり、実に1700年以上も前に作られたものである。
システムの雛形は初代の神々8名で立ち上げたものの、その後長きにわたり増設・機能拡張を繰り返したため、その情報量は爆発的に増加してしまい、現在の神々では更新など出来た代物ではなくなってしまっていた。 
それを可能としたのが、今まで姿を隠していた二人の最高神の出現と、さらに新たに加わった、森羅直属の攻式神官以外には未だに素性すら公開されていない二人の最高神の存在である。
だが、最高神4人をもってしても手が足らず、神々の中で「神格」への適合が高い神々にもお声が掛かることとなり、双子の兄・源司も当然これに該当した訳である。
更新中は星見町の管理は双子が交代で担うと申し出たのだが、兄はそれを断った。 この町に関しては兄にも拘りがあるのだろうと二人も諦めたが、結果町の管理と更新作業を同時に行うこととなった兄は、すっかり疲弊してしまったのだ。
今回最高神達がある思惑で立ち上げたこの更新、本来の予定でもかなりの作業量があったはずなのに、更新作業を始めてすぐに起こった「美作事件」がまたマズかった。 更新予定に含まれていなかった現行システムの不備が森羅によって指摘され、改善案が提出されてしまったのだ。

一つは「最高審議会の観測システムの強化」。
今回の事件のような、被観測情報にダミーを流して審議会の目を欺くような真似を決して許さぬよう、最終的にはシステムの完全再構築が決定された。

それと合わせて問題視されたのが、「神々の傲慢」である。
「家族以外の特定の個人を愛することの禁止」、これは森羅を含めた初代の8人が神の力の悪用を防ぐため、最も精神に影響を与える「恋愛」を自ら禁じる事を決めた条例である。
だが、時と共に神々は人々を見下し始め、交流を捨て、結果他人の痛みがわからぬ心良という最悪の存在を産み出してしまった。 この条例は、神々と人々との間に溝を作る、その拍車をかけているだけの存在にも思えた。
無論、彼らが最初に危惧した「神の力の悪用」の危険性が無くなったわけではない以上、恋愛を全面的に認める訳にもいかない。 どのみち恋愛を許可しようとも、その先にある「子をもうけること」は禁止されているのだ、神にも人にも最終的には辛い思いを強いるのみであろう。

このことに関し、森羅と最高神達の間で協議がなされ、結果新たな規則が採決された。

それが「日曜0時の通信簿タイム」である。
月曜日から日曜日までの神の精神動向を神システムが自動判定し、それに合わせた音声ガイダンスが頭の中に聞こえるよう取り決めた。
「貴方は貴方が管理している人々の誰一人にも好意を抱いていません。 頑張りましょう。」

まさに小学校の通信簿、「がんばろう」のノリである。 これが深夜0時に頭にちょろっと鳴り響く。
そしてその週で変化があると、それに即したアナウンスが入る。

「貴方は◯◯さんと親交を深めました。 よくできました。」
「貴方は◯◯さんに対してのみ少し強い好感を持っています。 注意が必要です。」
「貴方は◯◯さんに恋をしました。 危険です。 子をなし神格を捨て違う幸福を得るか、その恋を諦め神として生きるか、選ばなくてはなりません。」
などなど。

神格喪失に該当する活動が見られたときは、曜日に関係なく警告サイレンが鳴り響くようにもした。
「駄目、絶対!! 神格喪失してしまうぞ!?」

そんなアホな新設定。
神々からすれば「やかましいわ!!」「余計なお世話じゃ!!!」となりそうなこの設定、だが森羅はこれに満足した。 
実にバカバカしく、それでいてしっかりと自分達の現状を把握できる。 小学生並みの扱いを受けている神々からは、人々との交流くらい訳もないと、その傲慢さが薄れていく可能性も高い。 良く考えられていると、これを発案したイタズラ好きの旧友に感心した。

双子もこれには大賛成だった。
現在、彼らの兄は特例的に「恋愛に関する全ての条項破棄」を獲得しているのだが、双子はそれを未だに兄に伝えることが出来ずにいた(無論、今回の更新でもこのことは秘匿され、特例条項については最高神が管理した)。
虎鉄を好きになったことで随分と変わった兄。 それが嬉しくて、もっと幸せになって欲しくて最高神に持ちかけたこの特例も、兄にとっては「不正」でしかないのかも知れない。 そう、兄ならこの措置を知った瞬間に自らその権利を放棄しかねないのだ。 そして以前の、優しいが少し寂しそうな兄に戻りかねない。 それが怖くてずっと言い出せずにいたのだ。
が、今回のケースで行けば、兄の恋愛は確実に「許容される」側である。 こてっちとの間に子供はもうけることが出来ないし、こてっちが兄の好意を利用して力を使わせることなど天地が逆さまになろうとも起こりえない。 兄はただ、倫理如何を大きく逸脱する阿呆な力の使い方さえしなければ問題ないのだ。 森羅と最高神による提言はむしろ大歓迎であった。

しかし、結局これらの更新と、それに伴うシステムの見直しが入ってしまったことで、兄達の作業量は膨大に跳ね上がり、結果作業をここまで長引かせ、兄はすっかりクタクタとなってしまった訳だ。 双子としては複雑である。

「…俺らもシステム更新、手伝えば良かったね」
「うん、そしたらもっと早く終わったよな」

弟達の言葉に、兄はハハハと力無い笑みをこぼした。
「二人は研究発明は得意でも、神様の力の扱いはそんな得意じゃないだろう? 大変なんだぞ~?」
いたずらっぽく人差し指を立てる兄。
そうか、そこからまだ言ってなかったんだっけ…。 兄への秘密が随分増えてしまったことに二人は困った表情で顔を見合わせ、そして同時に小さく頷いた。

「ん? どうした?」
「あのね、兄ちゃん…俺ら、神々の力、結構使えるようになった」
「うん、特にシステム周りは、多分かなり使えてると思う」

恐る恐る言ってみる。 特に悪いことじゃないことは分かっている。 ただ、兄が自分達二人が神の力を一切使わず日常を過ごしていることを自慢に思っていることも知っていた。
落胆されたらどうしよう…そんな不安が二人にはあったのだ。
が、それは杞憂に終わってくれた。 兄は目を見開いて感嘆し、大いに二人を褒めてくれた。 二人はすっかり喜んでしまい、結果生まれて初めて、
完全に油断した。

「そうそう、結局皆とは仲良くなれたかい? 虎鉄さん以外とも一緒に温泉入ったんだろう?」
「あ、いや、結局兄ちゃん含めて誰も参加できなかったんだ~」
「そうなのかい? じゃあ虎鉄さんと三人っきり?」
「いや、それも…」

そこまで言ってしまって、以降に続く言葉のまずさに一瞬言葉に詰まってしまう。 それは本当に一瞬のことであったが、兄はその弟の動揺を

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見逃さなかった

「…何かあったのかい?」
その兄の眼力に双子が抵抗できるはずもなく、結局美作事件の一切合切全てを包み隠さず話さねばならなくなった。 波威流は、話の度に巻き起こる兄の激昂・怒号に戦々恐々とするばかりで、隣にいる弩来波も、いまやお漏らし寸前であった。

話が終わりプンスコと兄が温泉に向かうと、ダッシュで二人とも厨房に駆け込み、ありったけの食材で豪勢な夕食を作って兄を待った。 もう二人とも気が気じゃない。
が、温泉に浸かって戻ってきた兄は、目の下のクマもすっかり取れ、いつもどおりにニコニコしていた。
豪華な食事に驚き、大喜びで料理を頬張り始める。

「あの…兄ちゃん…?」
「ん?」
「も、もう大丈夫…?」
「あぁ、さっきは恥ずかしいところを見せてしまったね。 うん、ちゃんと手続きも取ったし、落ち着いたよ。 すまなかったね、大きな声を出してしまって」
そう言うと、頭を掻いて恥ずかしそうに笑った。
「えと…手続きって?」

「うむ、その心良という輩が飛ばされたのが私の師匠・亀神の御爺の管轄地域だったからね、師に頼んで『街中を歩いているとき、誰かに見られているとドブに嵌(はま)る』という地域限定法則を心良に対してのみ設けてもらった」
「誰かに見られてる?」
「もしその心良という者が変わらず高慢なままなら、周りの者達も彼がドブに嵌りそうになっていても声なんて掛けないだろう。 だが、少しでも彼を気にかけ、心配してくれる者が現れれば声を掛け、ドブに嵌るのを防いでくれる。 そうした中で人の暖かさに触れ、少しずつでも態度を改め、考えなおしてくれれば良い」
そう話し終えると、具沢山のお味噌汁をずずーっと飲んだ。

双子は顔を見合わせる。
あんなに怒っていた、主にこてっちの事で怒っていたであろう兄の、なんと冷静なことか。 それは、ともすれば「冷たさ」にも取られかねない。
少なくとも、そう、好きな相手の為くらいには、時にはその冷静さを欠いてあたふたしてしまうくらいでも良いんじゃないだろうか? そう思った。

そしてその機会は、実にあっさりと、その翌日に訪れるのであった。


旅館で一泊させてもらった源司は、自宅への帰路をちょっとだけ遠回りし、町の本屋さん「トラトラ屋」を訪れた。
店長の顔を見るのも久しぶりであったし、この前買った推理小説を読み終えた感想も話したかった。 そして、次に読む本のオススメも訊きたい。
トラトラ屋は源司にとって、他のトラトラメンバーには無い、虎鉄と源司だけの「特別な時間と空間」を提供してくれる場所であった。

いつもどおり鼻歌交じりに自動ドアを開けると、レジから大きな挨拶が聞こえてくる。
が、源司はそこに何やら違和感を覚えた。
この店は店長の指示が行き届いているのであろう、店員の挨拶は皆元気よく、明るさに満ちている。 レジの店員も仕事の話以外私語をしているところなど見たことがなく、全員いつでも眩しいくらいの笑顔で接客してくれる。 
しかし、今日は何故かその挨拶に元気が感じられない。 見ると、レジの店員も明らかに何かコソコソと話している。
キョロキョロと辺りを見回してみるが、店長の姿はない。 今日は出勤日と事前に確認してきた、シフトも早番なので、間違い無くいる時間帯なのだが…奥の事務所だろうか?
いくらお得意様と言ってもズカズカ事務所に入るわけにもいかない、どうしようかと悩んでいると、事務所のドアが開き、中から眼鏡の青年が現れた。
彼もよく知っている、二口(ふたぐち)さんが長期入院していたらしい間、およそ7年に渡り店長を支え二人で店を切り盛りしてきたトラトラ屋従業員の峰屋(みねや)君だ。 獣人が8割を占めるこの町で、彼は珍しい「人間」である。 だがこの店では獣人の店長が人間の彼と連携し、人間の彼が獣人のアルバイトスタッフにテキパキと指示を出し、皆もそれに従っている。 ここには、源司が理想とする二つの種族の信頼関係があった。 それも源司は大好きだった。
そんな、店一番と言えるほどのしっかり者の彼ですら、今は伏し目がちに、目の前のお客様が誰であるかも気付かぬ様子で機械的に挨拶した。

只事ではない

「峰屋さん」
そう声を掛けられ、その声に青年・峰屋君は飛び上がらんほどに驚いた。
「あ、げ、源司さん…!」
何かを言いたそうに口をパクパクさせたものの、彼はそのまま口をつぐんでしまった。
「…何かあったのですか?」
源司の問いにも、軽く頭を振るばかりだ。

「…店長さんはいらっしゃいますか?」
核心に触れると、彼の表情が僅かに変わった。 だがそれも一瞬で、すぐに笑顔を取り戻す。
「申し訳ありません、本日店長はお休みを頂いております」

そう、丁寧に頭を下げた。
首のあたりがザワザワする。 もう、悠長なことをしている場合ではない。
「店長さん、今日出勤でしたね? 何かあったのですか?」
「………」
先程と同じ二度目の問いに、眼鏡の奥でその瞳は明らかに動揺し、左右に逃げ場を求めている。
仕方がない、印籠を出すしかあるまい…

土地神として問おう、何があった、峰屋君?」

これには流石の彼も従わざるをえない。 が、それは彼にとって救いであった。 その言葉を聞いた途端、彼は小さく震え始め、瞳に涙を浮かべた。
「土地神様…オレ…もうどうしたら…」
彼は、誰にも頼れず、その心を痛めていたのだ。

事務所には入らず、どこか話せる場所はないかと、結局売り場とは壁で隔絶された通路の奥にある男子トイレを選んだ。
「…すみません土地神様…こんな場所で…」
「構わないよ、大丈夫かい…?」
眼鏡を上げて涙を拭うと、源司の優しい問い掛けに、峰屋君は小さく頷いた。

「何があったんだね?」
「…出勤時間になっても、店長がいらっしゃらなくて…」
「こて…店長さんが?」
「はい…それで店が開けられないと一番家が近い私に連絡が来て、鍵を開けに来ました…」
「それで、店長さんから何か連絡は?」
「一向に何もなくて、家の電話にも携帯にも電話したんですが…出られなくて…」

聞けば聞くほど胸の奥に冷たいものが溢れてくる。 大河原虎鉄という人物を知っていれば、この状況が如何にありえないかがわかる。

「二口さん、副店長さんには?」
「連絡しました。 店長の家には自分が行ってみるから、君は店を頼むと…」
「それで?」
「…いつまで経っても連絡なくて、副店長の携帯に電話したら…副店長も連絡取れなくなってしまって…! もう…どうしたらいいか…」

再び彼の目に涙が溜まり始めた。 余程不安を溜め込んでいたのだろう、それでも皆の前では気丈に振舞っていたのかも知れない。
「わかった、大丈夫」
震える彼の肩に、力強く手をかける。

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「私が見に行こう。 そうして必ず、君に連絡を入れよう。」
「……土地神様…」
「だからそれまで、頑張れるかい?」

その言葉に再び涙を拭うと、しっかりと源司の瞳を見て、「はい!」と元気に笑顔を見せた。
「うん、強い子だ」
そう言って頭を撫でる。 そのまま二人で売り場に戻ると、彼はそのまま店内のスタッフに何やら指示を出していた。
玄関から出ようとする源司に、スタッフ全員が深く頭を下げた。 源司も皆に頷いてみせると、そのまま店の外に出た。

その行為はいかにも「神様らしい」ので出来ればやりたくはなかったが、致し方ない。 源司はバサっと着物の上を肌蹴ると、背中の小さな翼を一気に大きく広げた。 1メートルほどに巨大化した翼を天を衝くほどに上に向けると、そのまま一気に下方へ叩きつける。 と同時に、源司の身体は遥か上空へと舞い上がった。
虎鉄のマンションを確認すると、そのまま一気に滑空する。

携帯を取り出すと、現状を自分よりも把握しているであろう人物にダイヤルする。
が、コール音はするのだが一向に出る気配がない。 そのままマンションにグングン近付くと、手前の5階建てマンションの屋上にその姿を発見する。

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「電話に出んかー!!!!!」

「ギャァアアアアアアアア!!!!!」

「な、なんだよ、この番号オヤジかよ!!? 何で俺の番号知ってんだ!? キバトラに聞いたのか!?」
「虎鉄さんがそのような真似するはずがなかろう! 私が独自に調べたのだ!!」
バサリと屋上に降り立つ神様に、ナギはジトッと視線を向ける。
「…これだから神様ってヤツはよぉ…」
「そんな事はどうでも良い!! ナギ君、虎鉄さんは今日どうしている!!?」
「は、はぁ!? し…知らねぇよ、俺はたまたま…」
「君はいつでも彼を見守っているであろう!! 隠してる場合ではない!!!」

ナギの耳が一気に赤くなる。 まぁ相手が神様ではどうしようもあるまい。
「…今日は、まだ出てきてねぇよ。 休みなんじゃねぇの?」
「出番だ出番! 早番だ!! 二口さんもいらっしゃっただろう!!?」
「あぁ、9時半過ぎくらいに来たぜ? 出番だったんならお説教タイムじゃねぇのか…?」

源司は小さく溜息をついた。
「本気で言ってる訳でもあるまいに…。 禁煙していたであろう?」
そう言って源司はナギの足元に視線を向ける。 落ちている吸殻の数が、彼の不安を物語っていた。
「何故確かめに入らん…? ここからでは何も見えまい」
そう、位置的に店長の部屋はここより上に当たり、どうあがいてもこの屋上からでは何もわからないのだ。
「…だから、どうやってだよ…? まるで俺がいっつもアイツを見てて、異変に気がついたみてぇじゃね…うぉっ!!?」
源司はそのままナギを抱え、再び上空に舞い上がった。
「面倒な男だ! ほら、君も行くぞ!!!」
「おい!!! ちょ…駄目だって!!!」
「君とは先程そこでたまたま会ったのだ!! それなら良かろう!!?」
「…わぁったよ、行きゃあいいんだろ…!?」

こうして神様と殺し屋さんは、共に店長マンションへと足を踏み入れることとなった。


ひらりと着地した場所は、階段やエレベーターに面した通路だ。 虎鉄の部屋は、廊下突き当たりを左に曲がった先にある。
どちらともなく駆け出す二人。 そして角を曲がり虎鉄の部屋に一直線に向かう。
部屋の前に立ち、迷わず源司がインターホンを押す。 だが、やはり反応がない。 後ろで控えているナギも、青い顔をしている。

一体何が起こったのか、源司には見当もつかなかった。

彼は常に、この町を監視している。
だが、全ての人の生活を覗き見ている訳ではない。 彼がチェックしているのは「害意」である。 誰かに危害を加えようとする意思、それは「悪意」と言っても良い。 それを彼は常に見張り、注意していた。
同時にもう一つ、彼が注意しているものがある。 それが「危険信号」だ。
生物の脳は、自身の危険を感知すると脳から凄まじい信号を発する。 それは本人が知覚する間もなく脳を破壊されるという状況下でも、頭部に衝撃が加わった瞬間に発せられる。 故意ではない事故、そして害意を持たずに命を奪う、職業としての殺し屋達、彼らをもこれで監視出来る。

ここで、この部屋で、何かが起こったのは間違いない。 だが、
何も感じなかったのだ。
害意も、悪意も、危険信号すら感じていない。
頭は既に軽い混乱を生じさせている。 詳しい検索をかけたくとも、虎鉄との約束がある。
自分の知らないところで、自分に力は使わないで欲しい
その約束だけは、破るわけにはいかなかった。 ならばにろさんに検索をかければ良いのだが、実はとっくに実行しているものの、何故かこちらは全く検索に引っかかってこない。
何がなにやらわからぬまま、ドアからL字に伸びたドアノブを下げてみる。
ドアノブはカチャリと回り、引くとそのままドアが開いた。
鍵がかかっていないことに助かりながらも、不安はますます広がるばかりだ。 そして、後ろにいるナギは、その「匂い」に気が付き、開けた戸の中を先に強引に覗き込んだ。
「ど、どうした…?」
「…オヤジ…落ち着いて見ろよ…」

彼のその声に、源司の心拍数は一気に跳ね上がる。 ナギの瞳は、ただ一点を凝視している。
ドアが徐々に開かれ、薄暗かった玄関に光が差し込む。
そこに、私服姿の巨体が俯(うつぶ)せに倒れていた。
側頭部から伸びる大きなツノ、間違いない、虎鉄の叔父・二口隼人だ。
ナギが先に入り、廊下の電気をつけた。
パッと明るくなった廊下を前に、源司は完全に立ち尽くした。

にろさんの口や喉の辺りから、廊下に血溜まりが広がっていた


何があったのか、訳がわからない。 
どうして、誰が、何を、疑問が渦巻くと同時に、源司は自分を罵り続けた。 一体何を見てきたのだ、自分は何のためにここにいるのか…。
だが、こういう状況下でナギがいたのはむしろ幸運であったと言える。 彼は実に冷静に、俯せで倒れているにろさんの首筋と手首に指を押し当て、現状を把握している。 そしてハッと気が付くと
「オヤジ! 息がある、仰向けにするから手を貸してくれ!」
そう叫んだ。
源司もハッと我に返り、ナギに手を貸してゆっくりとにろさんの身体を持ち上げ、仰向けに寝かせ直した。
傷口の応急処置と同時に呼吸を確かめ人工呼吸しようと思っていたナギだが、そこで動きがピタっと止まった。
「こりゃ…何だ…?」

源司も同じく呆然とした。
仰向けにしたにろさんはー

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やけに幸せそうだった。

息も普通にしてる、っていうかコレ鼻血じゃねぇか!!! ナギが一気に脱力した。
とはいえ、一体何があったのだろう? どうやったらこんな状況が起こりうるのだろう? あの位置で俯せで倒れていたということは、廊下の向こうに何かを見つけて倒れたということだ。
そう、この部屋の持ち主の姿も未だに見えない。 二人は謎を解明するため廊下を進み、次いで戸が開いたままの部屋の中に足を運んだ。

そして二人は、遂にそれを目の当たりにした。
あのオジキが、一発で意識を失う、恐るべきものを。

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「え…」

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「えぇええええええええええええ!!!!?」


源司編 第二話 『そのおもいのなをきみに』


「…お、おい…何だこれ…?」
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「キバトラの隠し子か…?」
「そ、そんな訳無かろう…!!」
源司は焦りながら、その赤ん坊を抱き上げる。
「緊急事態です、どうぞお許しください」
そう、一言赤ん坊に伝えておく。 もし、万が一「そう」だったとしても、これで一応約束は破ったことにはなるまい。
おでことおでこをくっつけて、その赤ん坊を調べてみる。

「…虎鉄さんだ」
「…は? 何だって…?」

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「この赤ちゃん、やはり虎鉄さんだ…」

これでようやく謎が解けた。
豆まき大会の時、にろさんは子供の頃の虎鉄の写真を見て鼻血を出していた。 ゲンナマを見てしまってはひとたまりもあるまい。 つまり彼は「昇天」してしまったのだ。 危険信号など脳が発するわけもない。

さて、それはそれとして、ビッグな謎が目の前に鎮座している。
これは一体何がどうしてこうなったのか?

まぁ心当たりはあるが…
「お、おい! オヤジ!!」
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「嫌がってる嫌がってる!!」

ナギの声に気が付くと、確かに明らかに赤ちゃん虎鉄に嫌がられていた。
ナギがパッと虎鉄を奪うと、虎鉄はイヤイヤをやめてキョトンとした。
「お? どうした、ん? ワンコ珍しいか? ん?」
虎鉄の脇を両手で抱えながら、顔を近付け話しかける。 と、赤ちゃん虎鉄は不思議そうに、ナギの大きな鼻に小さな手をペチペチと当て始めた。
「こっちはどうだ? ホレ、お耳さんパタパター」
そう言って頭の耳を前後に動かすと、さらに興味を惹かれたらしく、手を一生懸命に動かしてナギの耳にじゃれついた。
その光景に、源司は軽くへこむ。 まさか嫌がられるなんて夢にも思ってなかった。 頭のツノにチラリと目をやり、力を入れても微動だにしないそれをちょっと恨めしく思う。 自分も赤ちゃん虎鉄くんをあやしたいのに~

「オヤジ、そうへこむなって。 ほら、こいつもまだ赤ん坊だし、他の種族に慣れてねぇんだよ。 俺はイヌ科だからまだそうでもねぇが、オヤジ爬虫類じゃねぇか?」

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爬虫類!!!!?

ぶっちゃけものすごく落ち込んだ。 いや、待てよ…?
「それならタン君呼んだほうが良いのではないか? 同じネコ科だからもっと懐くのではないかな」
「!! い、いや、いいって! かえって話がややこしくなる!!」
「いや、しかし一番に考えるべきは虎鉄さんの精神状態であろう? 問題解決まででも手伝ってもらえればそれに越したことはあるまい?」

そこまで言われてしまってはどうしようもない。 ムゥ~と唸りながら、恨めしそうに源司が電話する姿を睨む。
「あ、タン君かな? 私だ、源司だ。」
それからしばし会話を交わし、電話を切った。
「…で、どうだって?」
「何やら大会が近いとか何とかで、今は稽古時間の一分一秒が惜しい状態らしい。 詳しく事情を話せば飛んできてくれそうだが、流石に悪い。 夜には手が空くから、その時でも力を貸せれば貸してくれるそうだ」
「そ、そうか」
なんだかちょっとほっとするナギさん。
「あと、やはり虎鉄さんを見かけていないことを気にしていた。 虎鉄さんが元に戻られたら、夜に一緒に道場に顔を出すこととしよう」
そう言いながら、源司はもう1件電話をかけた。 まさか茶道寺にまで声かける気か?と警戒したが、電話の先はトラトラ屋だった。
現状を何とか言い繕い、電話を切った。 フゥーと一息つく源司に、赤ん坊をあやしながらナギが疑問を投げかけた。
「で、さっきから問題解決できそうな口ぶりだが、治るのかコレ?」
「まぁ、このタイミングなら考えられる原因は一つしかないからな」

そう、間違いない。
こんな馬鹿げた現象、引き起こすきっかけになったとしたら、昨日の「神システムの更新」以外に考えられない。
システム内部にバグでもあったのだろう、それが悪いこと虎鉄さんに働いてしまってこんなことになったのではないかと推察される。
さて、そうするとこの状況を誰に相談したものか?
システムバグの発見ともなると、かなりの手間と時間がかかる。 相当な手練でなければ虎鉄君を長くこの状態にしてしまう。
能力で言えば最高神様達であろうが、自分はそこへのラインを持っていない。 茶道寺→森羅→最高神というラインがあるのだが、源司はそれを知らない。 当然、双子→最高神もだ。
そこで昨晩の会話を思い出した。 あの弟達がシステム周りに関して「かなり使えてる」という表現をしたのだ、実際には相当な手腕を持っているのではないだろうか? そう思い、相談のしやすさも相まって早速脳内で信号を送ってみる。

ーあれ、兄ちゃん? どうしたの?ー
脳内に、弟の声が響き渡る。
ー弩来波、波威流もいるかい?ー
ーうん、聞こえてるよー!ー
ーちょっと調べてほしいことがあるのだがー

事の次第を弟達に説明すると、二人は大笑いした。
ー凄い確率でついてないよね、こてっちって!ー
ー笑い事ではないぞ?ー
ーうん、ごめんごめん。 でもシステム洗い出しだと2,3時間は最低かかるよ?ー

ほら、2,3時間って言っちゃってる。 それ、普通は下手したら週単位の作業だよ?
ー何? 兄ちゃん何か笑った?ー
ーいやいや、お前たちが誇らしかっただけだよー
ー何の話?ー
ーまぁいいや、じゃ、待っててねー!ー

そう言って脳内通信は切れた。 本当に、何とも頼もしい弟達を持ったものである。

「どうだった?」
こめかみに指を当てたままの源司に、ナギが問いかける。
「あぁ、何とかなりそうだ。 原因部分さえ見つかればすぐに戻せるだろう」
「そっか。 良かったなー?」
赤ん坊に訊いてみるも、虎鉄はキョトンとしたままである。
と、グ~と虎鉄のお腹が大きく鳴った。
「何かお前って腹鳴ってばっかりだな」
そう言ってナギは笑った。
「…何の話かね?」
「いやいや、こっちの話。 っと、食い物食い物…」

赤ん坊を抱きかかえたまま、ナギは台所に向かった。 
待て、台所? アヤツ、まさか…!
不安に思い、源司も台所へ行こうとすると
「オヤジ、ちょいストップ!! こっち来るな…!!!」
突然、ナギが大声を出した。
「は? 何を言っておるのだ? キミ、やはり赤ん坊のミルクを…」
そう言いながら台所に行くと、入ってすぐにある丸テーブルの下に虎鉄の服が落ちており、続けてテーブルの上にあるものに目が行った。 
キョトンとする源司に、アチャーとナギが顔に手をやる。

テーブルには、ケーキが置いてあった。 
丸い形の小さなケーキ。 生クリームでデコレーションして、チョコペンで似顔絵を描いた可愛らしいケーキが
gensto2-12.jpg

三つ。

ナギ君、タン君、そして…茶道寺君
全部で…三つ。
そう、実は源司も気付いていた。 恐らくナギも、それに師範も気付いている。
今日は3月14日。 ホワイトデーである。
石動氏の話では、チョコを貰った人は「その想いを受け取るなら」お菓子をお返しするはずである。
だが、そこにあるケーキは三つ。 どう見ても、何度見ても

自分のが無かった。

「ホ、ホラ、コイツもなんか考えがあるんだよ! 別に作ったり、なぁ?」
赤ちゃんに振っても、今の虎鉄はキョトンとするばかりである。 
「そうだよ! あの石動とかいうヤツのだって無ぇだろ!? ちゃんとお返しするって言ってたし、やっぱ別になんか作ってるんだって!」

そうだろうか…?
石動氏に関して言えばあり得る話だ。 なにせそう近しい間柄ではないはずだ、ケーキを作っても当日会えるかどうか定かではない。 なら、万が一に備えて日持ちのする別のお菓子を作っていても不思議ではない。 現にこのケーキ、服の位置を見るに昨晩製作途中でこのアクシデントが起こってしまったのであろう、既に表面が乾き始めており、クリーム部分が食べられるかどうかも怪しい状態になってしまっている。 

だが、自分は? 
会おうと思えばいつだって会える。 すぐ近くに住んでいるのだし、電話をくれればすぐに会いに行ける。 他の3人と何ら変わりない。
いや…システム更新で2週間近く居なかったか…? それで自分のも石動氏のものと同様、何か別のものを用意して下さっていたのだろうか?

ハッと我に返るとブンブンと頭を振る。
こんなことで悩んだり落ち込んだりしていても仕方がない。 まずは赤ちゃんになってしまった虎鉄君に、不自由がないように心がけねば。
!! そう! そうだよ!!! 何故台所に来たのか思わず忘れるところであった!!!
「きっと何か作ってあるって。 気にすんなよ~」
そう言いながら、ナギが冷蔵庫に手をかけている! 案の定だよ!!!
「ナギ君! キミ、何を虎鉄さんにあげるつもりだ!?」
ピタっとナギの動きが止まり、不思議そうに振り返る。

「何って…ミルクだろ?」
「ミルクとは!?」
「…牛乳だろ?」

出たよ!!!

「ナギ君…牛乳なんて飲ませてしまったら、虎鉄さんお腹こわしてしまうぞ…?」
「は? あのなぁ、俺だってそこまで馬鹿じゃねぇよ」
「と言うと?」
「人肌だかにあっためればいいんだろ?」

出たよ!!!!!

「違う違う!! ちゃんと赤ちゃん用の『ベビーミルク』というものがあるのだ!!! ちょっと待ち給え!」
そう言うと、胸の前で両の掌を向かい合わせる。 掌の間にバチバチッと赤い稲妻が走ると、カッと目を見開いた! 瞳が赤い光を放ち、テーブルの上にボンッとミルク入りの哺乳瓶と、まだ湯に溶いていないベビーミルクの袋が現れた。
「うぉっ!! これ、パクッてきたのか!?」
人聞き悪いな君は!!! 『因果制御』で途中の工程を圧縮したのだ!」
「…は? 何だって?」
「買いに行く、お店で買う、持って帰る、水で溶いて温める、哺乳瓶に入れるという工程を簡単に言えば省略したのだ。 だから行ったお店のレジにはちゃんと記録が残っているし、お金もちゃんと入っている。 パクるなぞ神がするはずなかろう…」
へ~と感心すると、ナギは温かい哺乳瓶を手に取り、抱っこした虎鉄の前に持ってくる。 すると、虎鉄はその小さな両手を前に出し、欲しいのリアクションを体全体で表した。
「おぉおぉ、元気だなー! ほれ」
口元に哺乳瓶を持って行ってやると、飲み口に両手を添え、チュッチュと一生懸命に飲み始めた。

か、可愛い…。 私もミルクあげたいなぁ…。
源司は、今ほどネコ科になりたいと願ったことはなかった。


「おかしいなぁ…」
「うむ。 どうしたものか…」
ミルクも飲んでお腹いっぱいになった赤ちゃん虎鉄君、すっかりオネムのはずなのだが、一向に寝ようとしない。
ウトウトはしているのだ。 だが、寝そうになるとパッと目を開けてしまう。
どうにもつらそうに見えて仕方がない。 何が駄目なのだろう…?
「やはりナギ君とはいえ、安心して寝れるほどの存在ではないということであろうか…?」
「…あ、軽くへこむな。 なんかオヤジの気持ちがわかった気がするわ」
「いや、別に気遣ってもらわずともよいが…」
「だとするとやっぱオッサンかぁ…? でも忙しいっつってたんだろ?」
「そうだな。 やはりご親族の方が…」
「コイツの親父って、豆まきの時に来てたあの俳優だかだろ? それこそ予定立たねぇんじゃ…」
そう言って、ナギはパッと閃いた。
「オヤジ、ちょっと着物脱げ」
「ん? それはかまわぬが、私ではどうにもならんぞ…?」
源司の答えは気にせず、虎鉄を一度床に下ろすと、ナギもさっさと服を脱いでしまった。
お互いにパンツ(褌)一丁。 これでどうするのだろうか?
「オヤジの着物、ちょっと借りるぜ?」
そう言うと、ナギは着物を大雑把に羽織った。 そして胸元を大きく開けると、再び虎鉄を抱き上げ、自分の胸元に軽く押し当てた。
キョトンとした虎鉄は、胸元に顔を何度か擦りつけ、着物に手を伸ばしてその感触を確かめるとー

gensto2-13.jpg
「ビンゴだったな…」
そのままスヤスヤと眠ってしまった。

これにはすっかり感心した。

「何故わかったのかね?」
「コイツのオヤジだ。 和服が多いって話だったし、胸毛も結構生えてたろ? 赤ん坊なんて目はそんなに良い訳じゃねぇだろうし、感触近くすりゃなんとかなるかと思ってよ」
そう言うと、眠った虎鉄を抱いたまま、ナギもソファに横になった。
そうしていつの間にか、赤ん坊につられてか、ナギも寝息を立てていた。

ナギを連れてきて本当に正解だったと思いつつ、同時に自分が情けなかった。
神であるはずの自分が、ただただ慌てて、嫌がられてへこんで、ケーキが無くてへこんで、寝かせつける手段も思いつかない。
胸の奥が、なんだかチクチクとする。 
これは何だろう…?
罪悪感…? いや、なにか違うような…

そんな事を考えていたとき、弟からの信号を受信した。

そうだ、落ち込んでいる場合ではない。
私は、神として、神にしか出来ないことをすれば良いのだ。

ー波威流か? うん、うん…ー
gensto2-14.jpg

ー元に…戻せない…?ー

あと10時間足らずで   全ての記憶が


消える…?


つづく


はい!! メインキャラ3人目は源司さんでしたー!!
源司さんの話って、いっつも源司さんがへこむ傾向になっちゃいますね…。 もっと明るい話にしなければと思うのですが、彼の話のテーマが「神にとっての愛」なので、どうにもへこみがちな話になってしまいます…ひぎい!!!
さてさて、赤ちゃんになってしまったこてっちの運命は!? 記憶が消えるとはどういう事か!? ずっと気を失いっぱなしのダメ叔父にろさんの明日はどっちだ!!?

という訳で、次回に続くです~!!

そうそう、補足を一つ。
ナギさんが持っていた携帯電話(ゼブラ製)、上の方に丸い何かが付いてます。 あれがイヤホンで、そのまま人が使うことも出来るし、イヤホンを外して獣人が耳に装着して使うことも出来ます。 この世界の携帯電話は全種族対応型ならこれが標準装備になってます。

のんけも | 13:34:02 | Trackback(0) | Comments(31)
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